名張市は19日、通学や仕事をしながら家族の介護や世話をする子ども「ヤングケラー」の支援を盛り込んだ条例を制定することを公表した。子どもが教育を受ける機会の確保や、市などの責務の明確化を定める。条例案を市議会6月定例会に提案する。市によると、ヤングケラー支援条例の制定は埼玉県、北海道栗山町に続く全国3例目とみられる。
市議会教育民生委員会協議会で明らかにした。条例ではヤングケラーを18歳未満の子どもとして、「高齢や障害、病気などで援助が必要な家族や友人ら身近な人に対して、無償で介護、看護、日常生活の世話や援助を提供する者」と定義する。
基本理念では、ケアラーが個人として尊重されるために、市と市民、事業者、関係機関が責務・役割を果たし、連携して支援することを定める。また、市の子ども条例の趣旨に沿って、「教育の機会を確保し、健やかな成長が図られるようにしなければならない」としている。市の責務では、、福祉や医療、教育など支援に関わる分野間の連携を重視する。
学校などに対しては、「日常的にヤングケラーに関わる可能性がある」との認識を求める。関わる際には、本人の意向を尊重しつつ、教育の状況や生活環境を確認。支援の必要性があるかどうかを把握し、相談に応じたり、支援に結びつけたりする。
さらに、市は支援に携わる人材を育てる研修や施策を実施する。2020年度に市が県の委託で行ったリンクワーカー研修の裾野を広げた形を想定。経済的な困窮やひきこもりなど、ヤングケラーらが置かれた状況に関わる問題に気付き、支援につなげる人材を育成する。
市は20年8月、市内のヤングケラーの実態を調査し、少なくとも小中高生28人が家族の介護を・世話をしていることが判明した。その後、ヘルパーの利用などの支援につなげたという。市や市教育委員会は調査などを踏まえ、問題を可視化し、ケアラーを支援する地域ネットワークを充実させることを目指す。