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「差別解消」条例可決 紛争解決の仲裁、県の責務 県議会全会一致 2年議論/三重/毎日jp

 県議会は19日、「差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条例」案を全会一致で可決した。ヘイトスピーチやハラスメント行為など、あらゆる差別や人権問題の解消を目指す包括的な条例。県が差別や人権侵害の相談に応じ、差別を受けた被害者と相手側に介入して助言や反省を促す「説示」を行うなど、紛争解決の仲裁役を果たすことを県の責務として定めている。

 コロナ禍に端を発したSNS(ネット交流サービス)での中傷などを受けて、2020年5月、「差別解消を目指す条例検討調査特別委員会」を県議会に設置し、約2年にわたって議論を重ねてきた。
 条例では「あえゆる不当な差別をはじめとする人権侵害を許さない」と明記。県は差別や人権侵害を受けた被害者や家族、差別を目撃した第三者からの相談に応じ、双方への聞き取りなどの調査を行う。
 被害者側が県の相談への対応や調査に納得できない場合は、本人や家族、支援者などが知事に申し立てを行うことができるとした。知事は第三者機関である「差別解消調整委員会」の意見を聞いた上で、相手への助言や反省を促す「説示」、行政指導にあたる「勧告」を行うことが可能で、差別事案の概要は県のホームページなどで公表される。さらにネット上での人権侵害を監視するため、モニタリング活動も行う。県議会によると、差別事案で県が当事者間の仲裁役として介入できるようにした条例は全国初という。

 しかし、民事訴訟や捜査対象となっている場合は申し立てはできず、差別や人権侵害行為への罰則や、行為者の公共施設の利用制限は盛り込めていない。
 県議会「差別解消を目指す条例検討調査特別委員会」委員長の小島智子県議は「差別を受けた本人だけではなく、県として差別や人権侵害の解決に動くことが目的。出発点として『対話』を大切にしながら、教育や啓発につなげていきたい」と話した。また、差別解消に向けた包括的な条例は前例がないとしたうえで、今後について「より実効性を確保するため、個別的な課題への対応について引き続き議論を重ねていく必要がある」と述べた。

 ヘイトスピーチの問題などに詳しい、青木有加弁護士は「多様な参考人を呼ぶなど時間をかけて議論が行われており、条例が成立したことは評価したい」と述べた。ただその一方で、条例に記された差別や人権侵害の定義が広く、「具体的にどんな事案にできるのか不明な点がある」と指摘した。
 また、条例では不特定多数の人に向けた差別的言動は「当事者間」の紛争とは言いがたく、助言や説示の対象となることは難しいとされた。青木弁護士は「ヘイトスピーチは人種や民族などの属性を標的にして傷つける行動も多く、個人に向けられた差別だけを救済するだけでは不十分。今後は相談者が相談しやすく、身の安全を保障できる環境も求めたい」と話した。

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